パトリツィア・カヴァッリ『私の詩は世界を変えないだろう』

アガンベンが序文を寄せている詩集ということでパラパラとめくる。表題作にして冒頭の一作につき、以下拙訳。 ✳︎✳︎✳︎ 誰かが私に言った きっとあなたの詩は 世界を変えないだろうと 私は答える、そうきっと 私の詩は 世界を変えないだろう (Patricia Cavall…

フィクションの季節は終わった:ベンサム功利主義における美学の影

まず、ジャン=ピエール・クレロを引用するところから話を始めよう。 多くの哲学者たちは、バランスのとれた著作を執筆することに配慮しており、少なくとも18世紀以後は、一定の文量を美学に割いている。にもかかわらず、かくも大部分を快楽と苦痛とに割き、…

「役立たずですが、何か問題でも?」:千葉雅也「「過激で不愉快な同性愛者」の批評性」、『yom yom』vol.53 所収、読んだ

主著である『動きす』から入るのが王道でしょうし、読むべきなんですが、私は談話をもとに編集されたこの小品から、千葉雅也さんの考えていることに初めてアクセスすることとなりました。 内容は、昨年物議を醸した杉田水脈氏のLGBTをめぐる発言を受けて語ら…

【まとめてリライト】村田沙耶香『コンビニ人間』(文庫版)

「小さな光の箱」や「ガラスの箱」と形容されるコンビニのなかで、「コンビニの音」となってゆく無数の音たちに触れながら、主人公・古倉の肉体はマニュアルで彫塑され、見事な歯車として、透明な箱の新陳代謝に勤しんでゆく。 その古倉のアスペっぽい人格と…