2022-04-28から1日間の記事一覧

パトリツィア・カヴァッリ『私の詩は世界を変えないだろう』

アガンベンが序文を寄せている詩集ということでパラパラとめくる。表題作にして冒頭の一作につき、以下拙訳。 ✳︎✳︎✳︎ 誰かが私に言った きっとあなたの詩は 世界を変えないだろうと 私は答える、そうきっと 私の詩は 世界を変えないだろう (Patricia Cavall…

ジャガイモを食べるときに

鞭打たれる馬が視界に入るや否や駆け出し、その馬の首を抱きかかえ涙にくれたニーチェ。その後彼が発狂したことはよく知られている。かたや、馬のその後を知る者は誰もいない…。こうして始まるタル・ベーラ監督作『ニーチェの馬』では、強風の吹きすさぶ荒涼…

続「フィクションの季節は終わった」:ベンサム功利主義における美学の影

前回は「関心 interest」変容の思想史(それは18世紀における美学の誕生前夜の思想的コンテクストであった)を概観した。 helvetius.hatenablog.com この思想史の後半にベンサムは登場したと言える。それを踏まえてみると、ベンサムにおける interest 概念は…

フィクションの季節は終わった:ベンサム功利主義における美学の影

まず、ジャン=ピエール・クレロを引用するところから話を始めよう。 多くの哲学者たちは、バランスのとれた著作を執筆することに配慮しており、少なくとも18世紀以後は、一定の文量を美学に割いている。にもかかわらず、かくも大部分を快楽と苦痛とに割き、…